9月のひと

水谷修
{1956〜}

最近マスコミの話題になることもよくある、「夜回り先生」です。
本職は、横浜市の夜間高校の先生なのですが、これほどまでに真摯に、傷ついた子どもたちと向き合うことのできる教師を、私は他に知りません。
すべての子どもたちに、「生きてくれさえすれば、それでいいんだよ」というメッセージを伝えたい、と語っておられます。
もう13年間も、心身ともにキツイ「夜回り」を続けながらも、相手と共倒れしてしまわないのは、神父を目指していたこともあるという、信仰のためでしょうか。
つい不思議に思ってしまうほど、本当にひとりひとりに対して親身に、そしてときには捨身で接しておられるのです。
そうすることで、「大人」の側を敵に回してしまうことも多いのに。
自分の関わっていたある少年を、暴力団の組から抜けさせるために、指を一本詰められたことさえあります。
リンパ腫という病気を抱えておられるため、命のある間にと、「急いで」おられるのかもしれません・・・。
彼が語るシンプルな言葉の数々は、実に力強くて優しく、ストレートにひとの心に響きます。
親であり教師でもある私の、宝物です。
著書「夜回り先生」は、現代の日本のすべての親と教師に、ぜひ読んでいただきたい本だと思います。
10月27日の夜に、寺尾聰さん主演でTBSのドラマとして放送されることも決定しています。
水谷先生に直接出会うことのできた子どもたちと一緒に、ご健康をお祈りしていたいと思います。
以下に、特に私の心に残っている、いくつかのフレーズを挙げさせていただきます。
・ 自分からリスクを負わずに、他人と気持ちを分かち合うことなんてできない。
・ まじめな子ほど、まじめに壊れていく。
・ 自分が無理をすればするほど、人は避けていく。
・ 失われた愛情が、再び誰かによって満たされるまで、その行為はやめられない。
・ 子どもたちはよく失敗するし、その失敗を許せない大人が多い。
・ 人を殺そうが何しようが、まず今の自分を抱きしめろ。
・ 過ちは繰り返さなければいいし、新しい人生をつくればいい。
・ 子どもにいろんなものを見せ、それをその子が飲み込みながら自分をつくっていくのを助けるのが教師の仕事。
・ 病について語れば語るほど、もっと病んでいくんです。
・ 自分が幸せでない人間は、人に対して何かを語ってはいけません。
・ 生徒に「ごめんなさい」と「わかりません」がいっぱい言える教師がいい。
・ 本当に自分を探したかったら、人から学びなさい。
・ 悪とは善が欠如した状態で、本当の悪なんて、ない。
・ 物書きは、読んだ人に与えるものに責任をとってくれ。
・ 僕は顔が見えるから、水谷という人間だとわかっているから、子どもたちも相談してくるんです。




長月の句

草市や老婆誦しゐる観音経

林檎売る男の臀の財布かな

鏡花忌や水へなだるる葛の花

曼珠沙華だれに火がつく下校みち

月代や楽器の形なす鞄

水槽の魚の眠りや秋彼岸

秋雨やフジタの猫のみうと啼く

雑貨屋の縞の日除や小鳥来ぬ

鵙鳴くや父の机上の広辞苑

なかなかにくづれぬ雲や草の花


今月の長い蛇足

 「だれもあたしをたすけてくれない」

ほんとうはおとこのこになりたかったんだ
おんなのこのくせにっていわれずにすむし
おとこのひととけっこんして
あかちゃんをうむなんてこわい
しにそうにこわい
なのにあるひとつぜん
がっこうのおといれで
ぱんつにさいたばらのはなもよう
そんなものずっとみたくなかったのに
ともだちもみんなへんなかおしてる
なんにもきがつかないのはせんせいだけ
きっとおかあさんにしかられる
おばあちゃんだってしんじゃったし
だれもあたしをたすけてくれない



(そのまた蛇足)
私と同じくらいか、もう少し下の年齢の女性で、とりわけ第一子として生まれた方は、少女時代に、多かれ少なかれ、男の子だった方が良かったと思われたことがあるのではないでしょうか。
一説によると、そういう人たちは、長じて、やおい系というか、ボーイズラヴを扱うコミックなどのファンになる確率が高いそうです。
まあ、女性に限らず男性の場合も、第一子として生を享けてしまった者の感じる「世界との摩擦感」や「生きにくさ」といったものは、確実に存在するのではないかと思うこの頃ですが。


top
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送