51 new interpretation
1999.12/18 尼崎ピッコロシアター
1996年に初演された「51」の新解釈版です。
戦争を真正面から扱った、rhythm of lifeとしては異色の作品で、佐竹先生の、お父様に捧げるレクイエムでもあると思います。
テーマは同じ「命の重さ」でも、「LIFE」が光ならばこちらは影、という印象を受けました。
同時に、ストレートプレイでなくミュージカルでも、こんなに重い内容を表現することができるのだと思い知らされる、意欲的な作品だとも感じます。
物語は、第二次世界大戦末期に特攻隊に志願した20歳の青年、五一(ごいち・・・村澤智弘さん)が、謎の男、時代屋(佐竹先生)に導かれて、51年後の現代にタイムスリップし、同世代の若者たちと交流する、というもの。
が、はっきりとした筋立てはなく、登場人物たちの心の動きは、主に楽曲を軸にして展開されます。
そこに時代屋が、難しい長セリフで、時代背景の説明や方向付けを加える、という構成。
「皇国に生まれて君のために地獄に行く、何たる極楽ぞ」などという、本物の特攻隊員たちの手記も、実に効果的に用いられています。
天下国家や大義名分のためでなく、それが一握りの愛するものを守ることになると信じて、ひとは死地に赴かねばならないときもある、ということも、よくわかります。
(「空を征く・・・雲と遊ぶ 君の名を呼んでゆこう・・・」)
五一と父との野球を通じての絆と、失われてしまった彼らの夢にも、胸を打たれます。
最後に、現代の若者たちが、昭和20年8月6日の広島にタイムスリップしてしまったのは、戦争というものの理不尽さと、ひとの命の脆さを訴えるためでしょうか・・・。
(「生きていれば・・・きっと ときを超え 巡り合える・・・」)
「LIFE」のようにユーモアはないものの、しみじみと心に残る名作だと思います。
この作品に関しては、名場面をピックアップすることは難しいのですが、「ふるえていた陽炎」から「平和の踊り」のあたりと、「時代の恋」以降の後半部分はずっと、特に好きです。
熱演する村澤さんの、初々しく健気な表情と、透明感のある歌、佐竹先生との掛け合いのダンスは、素晴らしいと思います。
先生は、終始黒い帽子をかぶっていて、前半では表情がわかりにくいのですが、指の先まで神経を使った、筋の通った演技。
そして、後半で見せる、ハッとするほど真剣な表情は、何ともいえません。
ダンスも、ちょっと変わった振り付けが多くて、かなり高度だな、と感じました。
絶品なのは、エピローグの「FOR THE BOYS」。
佐竹先生の、全身から絞り出すように発声されるファンキーなリードと、あとの12人全員による見事なコーラスは、この作品の締め括りにふさわしく、何度でも観たくなってしまいます。
クールでニヒルな佐竹先生を観たいファンはもちろん、戦争と平和について考えてみたい方には、ぜひお薦めしたい一本です。
1 時代
2 どこへ行こうと さまようと
3 一枚の写真
4 現在へ
5 ふるえていた陽炎
6 平和の踊り
7 出会い
8 閉ざされた進路
9 白いボール
10 男の子・女の子
11 プレイボーイ・野球拳編
12 時代の恋
13 WAR
14 空を征く
15 生きていれば
16 八月六日
17 どこへ行こうと さまようと
18 FOR THE BOYS (エピローグ)
19 生きていれば (カーテンコール)
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